サーカスの夜に 小川糸
今回の読書感想は、小川糸さんの「サーカスの夜に」です。
小川糸さんと言えば、2017年の本屋大賞にノミネートされた「ツバキ文具店」が有名ですよね。
私はツバキ文具店を読んで、「小川糸さんって面白い文章書くなあ」と思って他の作品を読むようになりました。
その中でご紹介したいのが、サーカスの夜にです。
主人公の男の子が、13歳のときに育ての親であるおばあさんの反対を押し切りサーカス団に入団しようとサーカス団の本拠に向かうところから物語は始まります。
この少年、特にサーカスでやっていけるような特技があるわけでもなく、病気(を治す薬の副作用)のために13歳なのに10歳ぐらいの身長でこれから大きくなる見込みもないのですが、親と良い思い出があるサーカスに入りたい思いを捨てられず、思い切ってレインボーサーカスというサーカス団に向かいます。
そこは”番外地”と言われる、住所もないような場所にテントを張り、時々で各地を回りながらショーを行う、貧乏サーカス団なのですが、少年は何とかトイレ掃除やコックの手伝いをするということで住まわせてもらうことができるようになります。
サーカス団には、団長を始め、足を怪我したために道化役(クラウン)になった団長の息子や、体は男性・心は女性の綱渡りの名人や、ジャグリングの達人、生まれつき手が繋がった双子の姉妹など、さまざまな人がいます。
その中で主人公の少年は、各地に遠征に行く中で徐々に雑用だけでなく、サーカス団員としての技術も身に付けるようになります。
そしてラスト、サーカス団が少年の故郷に戻ってきたとき、育てのおばあさんの目の前で少年は自分の芸を見せるのです。
自分は小説を読むとき、頭の中で情景をイメージしながら読むのですが、そのときは基本的に実写(ていうんですかね?現実世界っぽく)でイメージしています。
ただ、この作品は気づいたらアニメでイメージしてしまいました。
何でだろうな?と考えてみると、出てくる登場人物や描写がすごく特徴的なので、アニメの、特にデフォルメした感じがぴたっとはまるからなのかなと思いました。
まるまる太った団長や、海辺でも革靴や帽子でかっちり決めているジャグリングの達人などは、実写だとこっけいな感じがしますが、アニメだとしっくりきますよね。
あと、主人公が料理の手伝いをする場面では、コックが動物の首を刎ねて、それを少年がボウルでキャッチする、なんていう場面もあります。その辺もなかなか実写だと衝撃ですからね。
さらに、いつの時代の話なのか明確にわかる描写がなく、砂糖が稀少、とかいう記載があるので中世とかの話なのかと思いきや、車が出てきたり、ボランティアの一環で病院にクラウン(ピエロ)が 訪れたり、古い話のような現代の話のような、という感じです。ただ、、、少年が大きくなれない体、というときに「そういうサッカー選手もいる」という記載があって、たぶんこれ、アルゼンチンのメッシ選手のことですよね?そう思うと現代なのかなと推測はしてます。
その辺も含めてアニメなら多少の違和感を包み込んでくれる感じでうまくイメージできます。
さて、自分がこの作品の中でもっとも印象に残った言葉はこれです。
人を笑わせるってことは、人を傷つけたり哀しませたりすることより、百倍も千倍も難しいわ
これはクラウン(ピエロ)役をやった女性が主人公の少年に言った言葉なのですが、確かにそうですよね。悪意はぶつければ簡単に相手に伝わると思うのですが、善意ってそもそも相手に伝えることが難しかったりするのと、伝えても正しく伝わってくれない、みたいなこともありますよね。この後のセリフでも「人生の哀しみを知らなくちゃ、相手を笑わせることなんてできないもの」と続きますが、自分が哀しみを知っているからこそ、相手が哀しいときにどんな気持ちか、どうしたら笑えるんだろうか、と考えることができるんだろうな、と思いました。
この作品は難しい言葉もあまりないので、小学生の高学年や中学生ぐらいの方が読んでみるのにすごく良いんじゃないかと思います。主人公も同年代ですしね。
もちろん自分も含め、大人の人も楽しめると思います。
今回は小川糸さんの「サーカスの夜に」の感想文でした、最後まで読んでいただきありがとうございました。