〜アメリカ最後の実験〜 ダークなピアノの物語
今回ご紹介する作品は、宮内悠介さんの「アメリカ最後の実験」です。
タイトルから想像するのは難しいですが、アメリカにある音楽学校(大学)の入学試験を舞台としたダークなピアノの物語です。
なぜダークか、というとピアノの入学試験であるにも関わらず、マフィアが出てきたり殺人があったり、大規模な陰謀があったり、とサスペンス的な要素も多くあるからです。
ピアノを競い合う、という意味では恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」に通じるところもありますが、サスペンス要素がこの作品を他の作品と一線を画す要因になっていると思いました。
アメリカを舞台にしつつ主人公は日本人で、ピアニストである父親が失踪したため、その父親を探すためアメリカにやってきます。
主人公もピアノを弾くのですが、その演奏に何か思いをのせたり、人を感動させる、というような思いはなく、「演奏はただのゲームだ」、というドライな考えの持ち主です。
ただ、演奏に熱中するとなぜかいつも自分が行ったこともない風景が頭の中に浮かびます。
そんな主人公が音楽学校受験の中で他の受験者や、父親と昔ともに過ごしていたという女性と知り合っていきます。
まずは音楽学校に入学して、父親に関する情報をつかもうとしますが、その受験の最中に受験会場で男性が殺害されます。
そこにはメッセージが残されています
The First Experiment of America(アメリカ最初の実験)
その後色々な事件が起こりながら試験も進んでいき・・・。
私がこの本を読もうと思ったきっかけは、本屋でタイトルを見てなったからです。
タイトルを見た時は、戦時中の何かの実験のことを言っているのかと想像して読んでみたので、完全に予想外でした。
うまくは書けないのですが、音楽とは何なのか、国家やコミュニティとはどういうものなのか、ということを書きたかったのではないかと思いました。
なかなか概念的なことで理解をしきることはできませんが。
残念だったのは場面展開が急で、ところどころ何をやっているのかわかりにく/どういう経緯で今に至ったのか理解しにくいところがあったことです。
この本は感想の賛否が分かれそうな作品だな、と思いました。