読書感想 第二次世界大戦関連の2冊

本日の読書感想は、第二次世界大戦絡みで2冊。

松岡圭祐さんの「八月十五日に吹く風」と、ピータートライアスさんの「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」です。

 

まず八月十五日に吹く風ですが、こちらは第二次世界大戦末期、日本がアメリカから占拠したキスカ島(樺太とアラスカの間にあるアリューシャン列島の中の島)が逆にアメリカ軍に完全包囲され、絶体絶命に陥った島内の兵士約5000名を日本軍が海軍・陸軍一丸となって救出する「キスカ島撤退作戦」を描いた作品です。

当時アメリカ人の日本人に対する感覚は「ハラキリや玉砕等、人命を軽視し進んで死に向かう野蛮な民族」であったが、その先入観を変えることにつながったのがこの作戦であるとこの作品では語られています。

島内に残された兵士たちは救出が来ることを信じて待ち続け、また、救出に向かう人たちは大きなリスクを抱えながらも救出を最後まで諦めずに5000人の兵士たちを家族の元に帰すべく全力を尽くします。

少し「かっこいい日本軍」対「残酷で間抜けなアメリカ軍」という構図になりすぎていて違和感はありますが、それでも日本軍の中に無謀な戦いばかりではなく、一人でも多くの人を救うという人間としてまっとうな考えを実現しようとした人たちがいたことは事実だと思いたいです。

 

次にユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパンについて。

こちらは史実にはのっとっておらず、完全な創作です。

第二次世界大戦でアメリカが日本・ドイツに破れ、終戦後数十年が経った日本統治下のアメリカを舞台に、日本による厳しい監視・管理とそれに対抗しアメリカ独立を求めるテロリストの争いを描いています。

この作品の中では日本統治下ということもあって、アメリカの中に日本の文化がとても浸透しています。たとえばご飯にはてんぷらなど和食の店が良く出てきたり、ゲームが物語の中で重要な役割を果たしていたり。戦闘用の人型ロボットが出ているところもなんとなく海外の人が抱く日本のイメージからきているのかな、と思います。

また、天皇を神と同一視して崇拝し、批判は絶対に許されない状態にあるとされています。そこはきっと筆者が日本に対して誤解しているのではなくて、「日本が第二次世界大戦に勝利した」という設定から、戦時中の日本が延長したらこういう社会だったのではないか、という思いで書いているのかなと思いました。

また、物語は終戦直後~1980年代まで年代がいくつか移り変わりながら展開するのですが、1980年代にはもう現実の2000年代と変わらない(スマホのようなものもあり、建物もとても複雑な構造になり)ものになっています。

これは、もし日本の物づくり技術が何の制限もうけることなく成長し続けたら、現実世界よりももっと早い科学技術の進歩があったのではないか、という作者の思いなのかな、と思います。

ここまでの説明だと、大きな争いを描いた作品のように思われるかもしれないですが、意外と争いの火種は小さくて、主人公たちがやっていることも地味です。

せっかく国の立場が実際とは違ったりするので、もう少し国対国のような大局を描けばよいのでは、と思うのですが、最終的に一部の地方の反乱がメインで描かれているので、そこは残念だなあと思いました。

 

予定していたわけではないですが、たまたま戦争関連のお話を直近で2冊読んだのでそれらの読書感想でした、読んで頂きありがとうございました。

 

八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

 

 

 

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

 
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)