小暮写眞館 宮部みゆき
本日の読書感想は宮部みゆきさんの「小暮写眞館」です。
私が読んだのは新潮文庫nex版なのですが、それでは全4冊に分かれていて、内容としては1冊ごとに完結していきます。
さびれた商店街に「小暮写眞館」という写真屋さんがあり、店主が亡くなったことから土地・建物が売りに出されます。
普通であれば古びた建物は壊してそこに新しい家を建てて住むのですが、ある変わり者の夫婦が「面白そうだから」ということで写真屋さんの外観・内装を残したままそこを住居として買い取って使い始めます。主人公はその夫婦の長男で高校生の花菱英一。弟の光(小学生)がいますが、それ以外に英一と光の間に風子という女の子がいたのですが、4歳の時に病気で亡くなってしまいました。
さて、この作品では写真にまつわる謎を解き明かすことがメインで進んでいくのですが、その中には心霊写真のようなものもあり、また人工的に作られた写真もあります。
いずれもそこに関わる人たちの思いを主人公の英一やそれに協力してくれる友人たちが理解しながら解決につなげていきます。
個々の写真にまつわる物語とは別軸で花菱一家の過去に関するお話や、小暮写眞館を購入する時に利用した不動産屋の社員に関するお話が4冊通して出てきて、お話全体に厚みを出しているという構成です。
この作品は単純なミステリー小説、というカテゴリーに入るものではなく、友情や家族愛が強く描かれていて、青春小説の要素が強いと思います。
この作品でいいなと思ったところは、
・主人公(英一)の心の声みたいなものが文中に頻繁に出てきて、それがいちいち面白い
・英一の周りの友人が魅力的
・物語の最終版、英一が家族がこれまで抱えてきた問題に終止符を打つべくある行動をとるのだが、それがとてもかっこよくて、読んでいてすっきりする
というところですね。
一点目は本当に、セリフと同じぐらい心の声が出てきます。
これが面白くないと作品全体がつまらなく感じてしまうと思うのですが、さすが宮部みゆきさん、本当にこういう人いそうだな、と思うぐらい心の声がナチュラルです。
二点目は、物語に大きくかかわる友人が4人ほど出てくるのですが、一人ひとり個性が強くて作品を読み終える時には、すごく親しみを覚えていました。
特に個性が強いのは優等生で何でもでき更にかっこいいのに、声が何かおかしい(地声が音痴)で、服装のセンスがおかしい英一の親友。人当たりもとても良く物語全体の進行に役立ってくれるときも多々あります。
弟の光とも仲良く子供にやさしいタイプですが、更に決めるときは決めてくれる頼もしいタイプでもあるので、こんな親友がいると幸せだなと思います。
三点目は、、、最後まで読んでいただいた方はきっと共感してくれると思うので、ぜひ読んでみてください。
なぜ私がこの部分を気に入ったかというと、多くの小説では、別の方向で(大人っぽく)解決して終わらせるんじゃないかと思うところを高校生の英一らしく、思いっきり直球で勝負しているところがあまり他の小説で同じような展開を読んだ記憶がないので、こういうのもいいな、と思いました。
1冊目だけでもすっきり終わっている感がありますので、まずは1冊目を読んで頂いて、気に入ったら2冊目以降も読んでいただければよいのではないかと思います。
ということで今回は宮部みゆきさんの小暮写眞館の読書感想でした、読んで頂いてありがとうございました。